せでぃのブログ

ブログ初心者おいどんのどうでもいい愚痴やどうでもいい愚痴やどうでもいいマメ知識などを披露するチラシの裏です。

VARIOUS_VENTURERS(冒険者の形)

wikiコミュニティを見て思いつき、30分で書いてみた。一応左手の小指で書いたとだけ事前に言い訳しておこう(大嘘
しかし、毎度のことながら、ネーミングセンスの欠片もねぇなぁ。語彙力も想像力も少ねぇし。


冒険者の形1

ダンバートンの朝は遅い。冒険者で賑わう商業都市ダンバートンは夜更かしする冒険者が多く、朝は一番秩序が保たれている。

僕は今、北の田舎町ティルコネイルから就職のために、ダンバートンに上京してきている。
良家の子女であればもっと大都市の学校に更に勉学を納めに行き、才能ある者であれば各都市の司書や司祭の仕事に就き、野心溢れる者であれば着の身着のままで冒険者になっているだろう。僕はそのいずれでもなく、それでも冒険者に関わる仕事を希望した。何度と無く進路希望を修正するようレイナルド先生にたしなめられたが、頑としてそれを断り続けた結果、この仕事が運良く舞い込んだという次第だ。
学校に張り出されていた求人用の付箋紙によると、ある裕福な冒険家を補助する仕事で、ダンバートンあたりの街で住み込みで働けるらしい。そして、何より気に入ったのがこの一文、「場合によっては、冒険に出てもらうこともあるので、冒険の基礎知識がある方優遇。」

冒険! それは男気溢れるスイーテストロマンティクルストイックファンタジックグレートフルフライングオペレーターズ……えーとえーと、それはもういいや。
ほとばしる電撃魔法、立ち上る硝煙、軋むカイトシールド、煌めくクレイモア、挑発するガイコツ戦士、テントの前で夕べの演奏会、えーとそれからそれから、あと何だろ。冒険したことないから想像が追いつかないや。

「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ、冒険じゃああああああああ。」

丹田あたりに溜まっていた灼熱の魂が咆哮となり、人通りの少ない朝のダンバートンにこだました。

「くすくす。」
「春だねぇ。」

冷たい視線を浴びて、灼熱の塊は頬っぺたまで上がってきた。


冒険者の形2

気を取り直して、ラサ先生に貰ったメモをズボンのポケットから取り出す。

『3月24日9時 ダンバートン食堂前にて待ち合わせ ジョージ・マックスウェルより』

何百回となく繰り返し読んだ待ち合わせのメモだ。うん、日付も場所も間違いない。

「あなたが、ソーコーニン君?」

控えめな化粧とは裏腹に派手なイブニングドレスを着た妙齢の女性に声をかけられた。足元を見ると、金属製の無骨なブーツを履いている。それぞれの装備は派手で高そうなものだが、全体のバランスが全く取れていない。オシャレ音痴な人なんだろうか。

「いえ、ソーコローニンです。あなたが、ジョージ・マックスウェルさんですか?」

言ってから違和感の正体に気付いた。ジョージというのは男の名前のはずだ。

「話すと長くなるから、移動しましょう。遅れてごめんなさい。私は、マスター・ジョージ・マックスウェルから遣わされた、ソー子。このまま銀行に向かいましょう。」
「はい。」



ダンバートン中央広場の一角にある銀行には、Gの文字看板が回っている。短い石段を登って、開きっぱなしの両開きのドアをくぐると中は想像を絶する喧噪と臭いに溢れていた。魚、肉、アルコール、土、藪、金属、腐敗した何かなどの雑多な臭いが僕の鼻腔を責め立てる。そもそも、これほどの人だかりを生まれてこの方見たことがなかったので、驚きのあまり何から質問していいかわからなくなってしまった。軽い吐き気と目眩もする。

「ええと、あの人たちは何をしてるのですか?」
「銀行に預けた荷物を出し入れしてる人たちよ。ほとんどが私たちの同業者ね。これがソーコ浪人君の仕事だから。」
「……。」

文字通り開いた口が塞がらない。絶対こんな仕事したくないと思った仕事をやれと言われたときの絶望感たるや。見ると、怒号まで飛び交っているではないか。ムリだ、もう田舎に帰ろうと思った矢先、銀行の片隅、座敷を広げた一団の前でソー子が止まった。

「はい、着いたわ。紹介するね。ここに居るトナカイとそっちのヘルメットとあたしが、マスター・ジョージ・マックスウェルのマネージメントを担当しています。ほかに二人、イメンマハとタラにも人がいるの。たまにここに来るからその内わかると思うわ。マネージメントと言っても、要は倉庫番ね。銀行の荷物とマスターのペットを管理するのが主な仕事。たまーーーーーーーーーに、ダンジョンに駆り出されたりすることもあるけど、滅多にないから安心して。で、こちらが……」

ソー子の言葉を遮って自己紹介をする。

「あ、はい。ティルコネイルから来ましたソーコローニンと言います。」
「よろしくね、ソーコ浪人。」

後ろであぐらをかいてお店を広げていた一団の数人から、よろしくなと声をかけられた。

「ソーコ浪人には錬金術関連の物を管理してもらいます。マスターは今、大陸の方に行ってるから、わからないことがあったらあたしに聞いて。あ、あと!!」
「はい!!」

急に大声を出されたので、思わず直立不動で返事をしてしまった。

「基本暇だから。何か遊び道具があれば持ってきてもいいわよ。」
「は、はぁ。」
「それとね。」
「はい。」
「私、座り方教わってないから立ちっぱなしだけど、気にしないでね。」
「は、はぁ。」

何とも凄まじい世界だ。

「浪人君。」

突然、後ろに居たトナカイの着ぐるみにレイバンをしたエルフが話しかけてきた。

「君、このローブ似合うんじゃないか? ちょっと着てみて。」
「え? ここでですか?」
「いいからいいから。」

強引に服の上からフードがカエルの頭の形になった足と手まですっぽり入るタイプの緑色の着ぐるみを着せられた。似合っているかどうか以前にこれはパーティで着るようなものではないのだろうか。

「いや、これ似合ってるというか滑稽なんじゃ……」
「いよっ! 男前っ! 着たな、着たよな。じゃあ、これからカエルスーツはソーコ浪人の管理だから、よろしく。それ、マスターのものだから、捨てるなよ。あとこれ、冒険者に必要な武器と防具ね。」

カエルがトナカイからピコピコハンマーと淡いピンク色の光を放つ丸盾を渡されて呆気に取られている間に、袴の上にフルフェイスのヘルメットを被った男が来て強引に握手をしていった。銀行内を見渡すと、この仲間たち同様に滑稽な格好をした人がゴロゴロ横になったり、真面目に帳面と向き合ったりしていた。


冒険者の形3

「お昼、どうする?」

ソー子が立ったまま、先ほどのエルフに向かって話しかけた。周りの動物風情と比べると格好よく見えるから不思議だ。

「グリニス食堂でいいんじゃない?」

トナカイ、もとい、エルフはもう横になって、雑誌を読み始めている。と、そのとき。

「お前ら、ちょっといいか。」

白髪オールバックに銀色のプレートメイルアーマー、両手剣を肩に担いだ騎士の格好をしたイケメンの男の子が突然、話しかけてきた。鎧にはあちこちに引っ掻き傷や黒く焦げた痕が見える。実戦で使っている証拠だ。10歳くらいだろうか、余りに冒険者の風格があり過ぎて、この一団に混ざると逆に浮いて見える。
キョトンとする自分を置いて、ほかの三人が一斉に飛び起きた。

「マ、マスター! 大陸にいたのでは?」
「タルティーンに急用ができてな。はい、これお土産の魔導スーツ。預かっといて。それより、錬金術専門の新入りってのはどうした。」
「この子です。」

慌ててソー子が紹介する。

「おー、お前か。」
「はい! ソーコローニンです!!」

軽く会釈する。この人が成功した冒険者マスター・ジョージか。尊敬よりも畏怖の念が勝り、萎縮してしまう。

「おいいいぃぃぃ、浪人、何でここに居るんだよ。タルティーンに行けってあれほど……、お前さぁ……」
「な、なんでしょう!」

何に付けても対人関係は初対面の印象が大事だと、レイナルド先生の授業で習った覚えがある。自分に非はないとは言え、これは最悪の展開……。

「カエルスーツ、似合ってるじゃないか!!」

一転、満面の笑みで左肩に軽いパンチを貰った。最悪でもなさそうだ。何だこの人。

冒険者の形4

マスターにカエルスーツを前から後ろからいじられている間、隣のソー子に話しかけられた。近くで見ると結構な美人だ。これで服装さえまともだったら……。

「マスター、短気で物忘れ激しいから。あまり気にしないで。元々、ダンバートンだって言ったのマスターだし。」

慌ててマスターを見ると、全く人の話を聞かずに、僕が着ているカエルスーツを熱心にいじっていた。何だこの人たち。



「もういい、行くぞ、ほら。馬を持てぃ。急げ!! 0.5秒で支度しなって、いつも言ってんだろ!!」

傍若無人とはこのことだ。ヘルメットの一人が慌てて死にかけの馬を銀行内に運び入れてきた。表情一つ変えずにマスターが馬の蘇生を行う。馬の白目と痙攣している足が怖い。え、この馬に乗るの?
その間、トナカイ、もとい、エルフに耳打ちされた。

「安心しろ、あー見えて滅法親切で優しい人だから、仕事もマスターから習うといい。じゃあ元気でな。」

ポンと肩を叩かれる。

「皆さんもお元気で。」

仲間になったばかりの動物、もとい、人たちと握手をしてマスターが乗った馬に向かう。

「あ。」

マスターが拍子抜けする声を出した。出張取り消しか、はたまた、即刻解雇か。

「お前、学校出だよな? 錬金術とアローリボルバー中心に冒険スキル全般覚えてもらうから。オレのギルドにも入れるから、覚悟しとけ。」
「は、はひっ!」
「まずは錬金術だな。」

唐突に降って湧いた嬉しい話に、カエルは舌を噛んだ。