せでぃのブログ

ブログ初心者おいどんのどうでもいい愚痴やどうでもいい愚痴やどうでもいいマメ知識などを披露するチラシの裏です。

Fiodhe_story1(フィアード物語1)

嬉し恥ずかし妄想物語、始まり始まり。


「おいおい、こりゃなんだ。森の中に街があるぜ。」

真っ暗な祠から出て来た大剣を背負った巨漢は明るい景色を見るなりそう叫んだ。そこは半天然の迷路で、崩れかけた土壁と長く伸びた雑草とが空と大地の境界を隠してしまっており、訪問者を嫌が応にもうら寂しいという思いに狩りたてる場所だった。

「フィアードは昔、人が住んでたことがあるんだよ。その名残だろう。昔話、聞いたことないのか?」

続いて祠から出てきたローブを着た小男が、疲れ切って汗まみれになった顔で興味なさげに応じた。

「ないな。地元じゃないし。ひょっとしたら、ドゥガルドアイルとかセンマイを開拓するより楽なんじゃねーか? それぐらい広いだろ。」

壁には蔦が張って床からは雑草がぼうぼうと生い茂る廃墟を、男は他人の家でも物色するような表情でひとしきり眺めていた。

「さぁな、オレだって地元じゃないよ。かろうじて門の開け閉めができるってだけで、肝心の天蓋が無いんじゃ雨宿りすらままならないだろ。人間のための呪いだって掛けられてるって話だから、大勢で入植するにはかえって七面倒くさいところじゃないか?」
「呪い?」

目を輝かせる男とは裏腹に、小男の方はフードに隠れた顔を更に手で覆った。

「もういい。道すがら話してやるから、今は仕事を始めよう。」
「あいよ。」

そう言って、巨漢の男は背中に背負っていた長い剣を、ローブの男は背中から1組のクロスボウを取り出すと、

「獲物を取るなよ。」
「射線に立つなよ。」

相手に同時に注意を促して、

「あいあい。」
「そうだな。」

両方同時に渋々同意した。