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せでぃのブログ

ブログ初心者おいどんのどうでもいい愚痴やどうでもいい愚痴やどうでもいいマメ知識などを披露するチラシの裏です。

THANK_YOU_FOR_FRIENDS_NEVER_SEEN

旧ダイアリ・夢小説

出来の悪い小説風の夢をば、うp。
超長文なので、ヒマ人以外はスルー推奨。いや、mjd


時は2028年、春。
春だというのに桜はとうに散り、木の枝にはところどころ新緑の幼い木の芽が芽吹いている。私服の大人たちは、長袖とは言え夏を先取りして薄着だ。
僕は入学式の最中、体育館の窓に映る明るい景色をボーっと眺めていた。


「新入生一同、起立!」


教師の声に気付くのが遅れたものの、慌てることもなくノロノロと周りに習った。
紅白の垂れ幕のせいか幾分紅潮して見える教師の顔を見て、誰かに似ているような気がした。誰だっただろうか。芸能人? いや、芸能人に疎い僕に名前が出てくる訳もない。そして、僕と一緒にノロノロと遅れて立ち上がる同級生の表情にも既視感を覚えた。こっちはすぐにわかった。新入社員教育を受けていたときの同僚はこんな表情だった。


先ほどは、ただボーっとしていた訳ではない。と言っても有意義な思索をしていた訳でもない。ひたすらに現在の境遇について思いを巡らせていた。




慌(あわただ)しい朝の身支度を終え、自転車の籠に鞄を突っ込むと、コンマ1秒を争うオリンピック選手さながらの勢いで自転車を漕ぎ出した。
「朝は弱いんです。」
といい歳した中年が言っても何の言い訳にもならないだろう。それがわかっているからこそ、毎朝殺伐と出勤する訳だが。


日本海側と違って太平洋側は驚くほど積雪が少ない。太平洋側の人間からすれば日本海側の積雪が多過ぎるということになる。どちらも経験済みの僕からすれば、どちらもおかしいのだ。それくらい東北の冬の天気は奥羽山脈を境に東西で豹変する。ただ、積雪が少なく交通機関が麻痺しない分、こっちの方が暮らし易いと思う。


霜が降りて薄っすら白くなったアスファルトをメリメリと音を立てて轍(わだち)を付けながら工場の角を曲がり、真っ直ぐ大通りに向かう。大通りに出てしまえば、後は道なりに10分ほど走れば会社に着く。その大通りへ向かう直線の道路で、後ろから車が走ってくる音が聞こえた。


次の瞬間、僕は5m程先にあった道端の電柱めがけて自転車諸共吹っ飛ばされていた。
冷静さの欠片もなくなった僕は、(電柱にぶつかってしまう!)、何の解決策にもならないことばかりに気を取られていた。




人間は自分の寝床の天井を記憶して、それをどう活用したいのだろうか?


見慣れない真っ白の天井に違和感を覚えて目を覚ますと、兄が驚いた様子で僕を覗き込んでいた。
兄は、以前会った時よりも目尻の辺りに皺(しわ)が増え、前髪が「激」しく後退したように見えた。
しきりに、

「せでぃが起きた。せでぃが起きた。」

と相手が不明な呼びかけを繰り返していた。「クララが立った」と言うアニメの台詞と、別なアニメの動画を組み合わせたパロディを思い出しニヤついたところで、普段と変わらない、くだらない自分の考えに安堵した。兄に何かあったのだろうか。


もとい、何かあったのは僕の方だった。
ベッドの上で何回も医者の診察を受けいろいろな人と面会しすぐに睡魔が襲ってくるせいで、ゆっくり兄と話す時間が作れなかった。話ができたのは、それから2,3日が過ぎた後だった。


僕が交通事故に遭ったこと、大体20年近く植物人間の状態だったこと、轢き逃げだったこと、交通量の少ない朝の事故が祟って犯人は未だ捕まっていないこと、僕の両親は既に他界していること、事故の後しばらくして僕を退職させたこと、住んでいたアパートも引き払ったことなどを兄から聞いた。


ショックと言えばショックだったが、僕は中間管理職だ。いや、元管理職か。認めたくない現実への対処法は身に滲みて知っている。やるべき何かを見つけて実行すること、ただそれだけだ。
まさか、その対処法で更にショックを受けるとは思わなかったが。


リハビリのために病院のベッドを抜ける段になって、目を覚ましてから少しずつ感じていた違和感を改めて再確認することになった。


兄は年を取ってから背が伸びたのか?
病院のベッドは足元にこれ程の余丁があったのか?
何より、僕の手足はこんなに水々しいほどの弾力があったのか?


僕の身体は若返っていた。小学生、それも低学年くらいか。


そして、兄から全く嬉しくない退院祝いを受け取ることになった。兄の養子になり、また、小学校からやり直せということだった……
「御前とオレの家族のことを考慮すると、それが今考えられるベストな選択だ」
と。
20年分の仕事を0からやり直すという膨大な仕事量に軽い眩暈を覚えた。自分の将来の器量と大人の現実を知っている小学生が、人生の何を楽しめるというのか!!
兄に当たっても何も解決しないことはわかっている。ほかに建設的な提案とやらも思いつかない。会社の同僚や昔の同級生を訪ねてみたいという思いがあったものの、それで何かが解決できるようにも思えない。この怒りは誰にぶつければいいのか。


その時は、この新しい世界と自分のことを少しでも多く知ることに少なからず時間がかかりそうだと、狡猾に打算を巡らす「子供の」自分が酷く惨めに思えた。




入学式前の緊張は徒労に終わった。


地元に残っていた兄の家に居候するため、兄と僕自身の母校に再度通うことになったのだが、予想以上に生徒数が少なかった。いや、訂正しよう。圧倒的に少なかった。
僕が「現役」の頃は1クラス30人で1学年は6クラス、大体200人前後の同窓生が居たものだったが、政治に疎い僕が本気で日本の未来と知らない顔が居ない子供たちの将来と教員の失業を心配するほどに同窓生は少なかった。1クラス30人。それが僕の学年の生徒数らしい。全校生徒を合わせても300人に遠く及ばない。
倉庫になったという教室をも哀れんでしまった。どこの田舎の分校かと、苦笑せざるを得なかった。


とその時、


「もしかして、社会人、経験してる人?」


入学式が終わり、自分の教室に戻ると、セーラー服の女の子から唐突に話しかけられた。滅多にかけられない言葉のせいで、咄嗟には意味が理解できなかった。


「あなたも?」


気が動転して少し返事が遅れてしまった。見ると、入学式で僕と一緒にノロノロ起立した級友だ。セーラー服を着ているからどこかほかの地域から編入して来たのだろう。


「本当に!? 本当に元社会人? あたし、元主婦!!」


興奮を覚える一方、目が輝くとはこういう状態を言うんだろうなぁと、妙なところに感心してしまった。


「なぁ、せでぃって名前の親戚いないか!?」


その直後、入学式で顔に覚えがあった中年の教師が、やたら馴れ馴れしく声をかけてきた。
もう少しがんばれそうだ。


Not to be continued...単なる僕の夢だからねw