せでぃのブログ

ブログ初心者おいどんのどうでもいい愚痴やどうでもいい愚痴やどうでもいいマメ知識などを披露するチラシの裏です。

中村弦

今週のお題「夏に読みたい1冊」
夏に限った話ではないけども、中村弦の3作を読んでしまったので、なるたけ早く次の作品が読みたい。


全体を通して、中村弦の作品は完成度が高い。緻密だと思う。人や街に細かい設定がありながら、エンターテイメントを忘れず、ファンタジーを忘れず、テンポを忘れず、伏線回収を忘れない。ファンタジーがサプライズを兼ねて、各作品の味付けになっている。

そのバランス感覚も一品なんだけど、時代考証が特に凄い。おいどんより一回り上ってことは、第二次大戦のことなど知らないだろうに、さも見てきたかのような話を作ってくる。天使の歩廊とクロノスの飛翔は戦中戦後の日本を生きる主人公の"今"を書くのだから、舌を巻くほかない。


中村弦の小説を読んで、あーこれが「作品」なんだと思った。思わされた。本人が苦労しているかどうかはわからないけど、かなりの量の資料を下調べで読み込んでいるのだろう。そこで得た膨大な情報を知識を薀蓄を、話の作りこみの際にバッサバッサと贅沢に切り捨てているに違いない。あーもったいないw その知識に裏打ちされ、懇切丁寧にバランシングされ、執拗に校正された極上のファンタジーが毎度毎度、出されてくるのだ。

舐めてたわ。小説舐めてた。おいどんにも書けるとか思い上がってた自分を殴りたい。まったく持って打ちのめされたよ。
世の中、いろいろあっていい、あっていいんだけど。読者としてのエゴ剥き出しで言ってしまうと、プロというならこれくらい書いてみろよとほかの作家さん達に思ってしまうほどよくできた理想の作品たちでした。

褒めすぎ? いや、自分に正直に書くとこんなもん。あー、早く次の作品読みたいなぁ。


中村弦(Nakamura Gen)
1962年東京都生まれ。國學院大學文学部卒業。2008年『天使の歩廊 ある建築家をめぐる物語』で日本ファンタジーノベル大賞受賞。