- 作者: 森岡浩之
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/11/15
- メディア: Kindle版
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惑星マルティーニュの領主の子息ジントと巡察艦ゴースロスの翔士修技生ラフィールの二人旅。一応ネタバレは避けるので、いろいろ巻き込まれるとだけ。世界観説明の通り、超光速航行は既に実現され、宇宙船による戦争も歴史上発生している世界。1巻にある伏線全てを回収するには星界の紋章3冊と星界の戦旗3冊を読む必要あり。
宇宙ケサース、帝国フリューバル、艦長サレール、巡察艦レスイー、軍衣セリーヌなどなど。フリガナが多くてもんにょりする。時空泡フラサスとか空識覚器官フローシュ、端末腕環クリューノあたりはこの世界独特のものなので、まぁ仕方ないとは思うけど、ちょっと多くてなぁ。タイラーとアルスラーンっぽい感じかねぇ。フリガナが多いのとボリュームが少ないのを気にしなければ普通に面白いと思う。ボリュームは物足りない代わりにテンポが良くてコンパクトだ。
星界の紋章の世界観
宇宙船のエネルギー源はユアノンというこの世界独特のもの。門を出入り口として平面宇宙を経由した超光速航行を実現している。平面宇宙では時空泡というもので船をつつみ、船とその周囲の通常空間ごと平面宇宙に持ち込む。アーヴという見た目が老けず美男美女揃いの耳が尖ったエルフのような種族が<アーヴによる人類帝国>という世襲制の貴族社会を築いている。
全て読み終わってから気づいたことだが、アーヴという生体機械が繁殖して宇宙を支配するという発想が面白いかもしれない。今のところ、アーヴと人間の間に子供ができるかどうかはわからない。アーヴにとっては不幸かもしれないが、人間よりはアンドロイドの方が宇宙の植民には向いているように思う。
ダイソン球
物語には本当に関わってこず、1箇所だけなので下手すると見逃す。
恒星アブリアルに近づく者は、細い繊維で編んだ、目の大きな球形の籠に恒星が封じられているのを目にするだろう。細い、といっても恒星本体に比べての話で、その帯状の構造物は幅が五00ヴェスダージュ*1ある。帯の、恒星にむかった側は太陽電池となっており、その反対側に並んだ無数の直線加速器が、休みなく反物質燃料を製造している。これは帝国のみならず既知宇宙でも最大の反物質燃料製造工場だった。
ユアノン
質量比から解放されたってことにするための設定。
ある国家の派遣したオールト雲調査船が、太陽から0・三光年離れた空域で不思議な素粒子を発見した。質量は陽子の一000倍ほど。それだけでもじゅうぶんに異常な粒子だったが、さらに困惑させる特性をもっていた。
およそ五00メガワットのエネルギーを放射していたのだ。そのエネルギーがどこからやってくるものやら、だれにも指摘できなかった。
もしユアノンを宇宙船のエネルギー源とできるなら、質量比のことは忘れてもかまわない。なにしろ燃料がいらないのだから。
超光速航行
ぶっちゃけ仕組みはわからん。平面宇宙でも戦争する。
超光速航行の秘密は平面宇宙という、通常宇宙とはべつの物理法則が支配する宇宙にあった。その名のとおり、二次元の空間と一次元の時間で成り立つ宇宙である。アーヴの恒星間宇宙船は時空泡につつまれて異質な宇宙を渡る。時空泡はきりとられた通常宇宙であり、ちょうど四次元時空のなかに縮小化された六次元連続体が存在するように、平面宇宙のなかでも存在を許されるのだ。
<門>ソード
閉じた門というものがあったり移動できたりする。見た目は球状という記載があった。平面宇宙では通信できなかったはずが泡間通信というのが出てきたり、でも時空泡の場所がわかってたり。やっぱりよくわからん。これ大艦隊で一斉に出入りしたら衝突しない?
「<門>の内側と外側は、つまり平面宇宙側と通常宇宙側ということですが、それぞれ対応しています。しかし正確な位置はわかりません。<門>は平面宇宙側では不完全な螺旋状曲線を描いていることが多いのですが、その曲線のどの部分に出るかはわからないのです」
通常宇宙における<門>はほとんど質量をもたず、自身がエネルギーを輻射しているので、太陽風と反発しあう。したがって、自然状態では星系外縁部に位置するのが一般的である。
だが、<門>が事象の地平線の彼方に位置するとき、<門>は輻射以上のエネルギー圧を受けることになる。そういった場合、大部分の<門>とはぎゃくに、通常宇宙から平面宇宙にエネルギーが流れこむ。これを<火山>と呼ぶ。
<火山>からのエネルギーは時空粒子ー電子の四倍ほどの質量をもつ縮小化された四次元時空となって、粒子密度の濃いほうから薄いほうへと平面宇宙を流れ、ほかの<門>に出会うと通常宇宙に戻る。
時空泡は時空粒子と相互作用する。時空粒子を吸収し、また放出する。吸収量より放出量が多いので、その差は時空泡発生機関に注ぎこまれるエネルギーによって補填されねばならない。それが平面宇宙に支払う通行料となる。
また時空泡は、時空粒子のほかに質量波を放射する。通常空間における電磁波とどうよう、それは理論上は無限に到達し、時空泡もつらぬく。したがって、かなり遠くからでも時空泡の存在は感知された。